
「……口封じ」
「『あいつら』ならやりかねないね。だが、疑問が残る。お前が言ったように『なぜ今さら』ってね。とにかくすぐ出発する。イークハール・ルアルゴーさんには休みが欲しいとか言って、何とか言い訳してこい。今、帝王祭の時期だから、休めるだろ」
「ああ、そうする。だが、その前にひと仕事あるぞ」
ユサは手持ちのナイフを手早くある木に向かって投げた。そして低く告げる。
「出て来い、ヴィンセント」
「げっ」
と言ったのは郵便屋だ。
木に隠れるようにしていたヴィンセントが、ゆっくりと姿を見せる。いつもは穏やかで気だるそうな水色の瞳には、ただならぬ殺気が見え隠れしていた。その鋭い視線を真っ向から受けても、ユサは顔色一つ変えない。
「ヴィンセント、一つ忠告しておくと、ここは結界の中だぞ?」
「知ってるさ。ここに来れるのは自分だけだと思ってたんじゃないだろうな、ユサ。僕だって周期は把握してる」
「鈍感なお前が、些細な『歪み』を見極められるとは思わないな」
「そこの郵便屋に教えてもらった」
「……ティム」
ユサに凄まれ、郵便屋は渋面を作った。教えたくて教えたのではない。これにはきちんとした「立派な」理由があるのだ。
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昔書いてた小説の1シーン。郵便屋さんがいないけど…。

